会社が倒産したら経営者はどうなるのか?誰も教えてくれない現実とは

会社が倒産したら経営者はどうなるのか?誰も教えてくれない現実とは

東京商工リサーチの調査によれば、2017年上半期の倒産件数は4220件、リーマン・ショックが発生した2008年以降、9年ぶりに前年同期よりも増加しています。特に零細企業の倒産件数は全体の7割以上を占め、今後は人手不足による人件費高騰のあおりを受けて倒産する企業もさらに増加する可能性もあると言われています。


もはや中小・零細企業の経営者にとってもはや他人事とは言えない状況。もし会社を倒産させてしまったとき、企業の経営者には一体どのようなことが起きるのでしょうか。誰も教えてくれない、倒産の現実を解説します。

1.倒産したら借金はどうなる?

倒産とは、簡単に言うなら「会社の資金繰りが行き詰った状態」のことです。

通常なら決められた期日に行われるはずの、社員の給与支給や金融機関への返済が不可能になったとき、裁判所に救済を行うための申請を行うことが「倒産」です。

そのとき、倒産した企業の経営者は「清算」か「再生」か、どちらかの選択を迫られます。

「清算」はそれ以上の経営を断念することです。経営を続けても利益が出ない、企業の競争力や市場が縮小してしまったという場合には「清算」を選び、会社の後始末をすることになります。
一方、大口の取引先の企業が倒産してしまって売掛金が回収できないなど、一時的な失敗が原因の場合や、再び経営を行えば黒字化の道が見えるときには「再生」が選択されることになります。
ただし、どちらの場合も金融機関から借りたお金の後始末をしなければならないことに変わりはありません。

 

① 「清算」を選んだ場合

さらに3つの選択肢が提示されます。

まずひとつは「内整理」と呼ばれるものです。これは債権者と交渉することで債権の一部を放棄してもらい、残りを弁済して会社を清算する方法です。これは事業規模の小さな企業でよく用いられる方法ですが、交渉が不調に終わると、裁判で解決することになります。

裁判で解決することになった場合、「破産」か「特別清算」のどちらかの方法が用いられます。

「破産」は裁判所に任命された破産管財人が企業の資産を調査・換金し、破産法に則って債権者に分配を行います。

「特別清算」は総債権額の3分の2を占める債権者がいる場合に用いられます。その債権者の合意を得て、債務をカットし債権超過を解消します。

どの方法を選択するにしても、会社の資産が十分にある場合は借りたお金を返済することができますが、もし資産が十分でなかった場合には多くの人に迷惑をかけることになります。

 

 ② 「再生」を行う場合

再生を行う場合にも3つの方法があります。

ひとつは金融機関や債権者と話し合い、債務の返済猶予や一時免除を得て再生を行う「私的整理」です。この場合、すべての金融機関や債務者が返済の猶予や一時免除に応じてもらうことで、その間に会社の立て直しを図ります。

残りのふたつが「会社更生」と「民事再生」です。「会社更生」と「民事再生」の違いは、「会社更生」の場合は裁判所が任命した管財人が債権を行うのに対して、民事再生は破産した企業自身が財産の処分などを行います。

この再生の場合は企業を立て直し、黒字化することで債務返済を目指すものですが、お金を借りた相手に体力がない場合、巻き添えでその企業を倒産させてしまうこともあります。

 

以上が倒産したときに会社に起きることですが、それでは会社が倒産した場合、経営者自身はどうなってしまうのでしょうか。

法的に言えば、法人と個人は別人格ということになっています。つまり、会社が倒産しても経営者が法的義務を負ったり、会社の負債を肩代わりしたりということにはなりません。

しかし実際には、多くの企業が融資を受ける際に、経営者や役員、その家族が連帯保証人となることが求められます。

そうなると会社が倒産した場合、会社の債務は連帯保証人である経営者に移行しますが、中小企業や零細企業の場合、経営者だけに資産があり、企業にはないというケースはほとんどないため、経営者自身も破産を行うということになります。

破産すると、転居や旅行に制限がある、クレジットカードが作れないといった具体的な不便はもちろん、周囲の目を気にしなければならない、人に迷惑を掛けたという負い目を背負って生き続けることになります。

2.会社の従業員への対応

会社が倒産した場合、大きな問題は所属している従業員への対応です。

倒産するということは、従業員にとっては仕事が失われるという大きな問題。場合によっては、今まで働いた分の給料が支払われないということにもなりかねません。

破産法の中では、給与や退職金は他の債権より優先的に取り扱うことと決められています。
そのため、会社にある程度資産が残っている場合、その資産は優先的に従業員へ支払われることになります。

しかし、税金なども同じく優先度の高い扱いとなっているため、企業に税の滞納などが合った場合や、そもそも資産が尽きてしまっていると言う場合には、どうしても支払われる未払いの給与や退職金は少なくなってしまいます。

人情として従業員の給料だけはなんとかしたいという経営者でも、勝手に会社の資産から従業員の給与だけを支払ってしまうと、破産が認められない否認権行使の対象となることもあります。

また、会社が破産するということは、会社がなくなるということです。そのため経営者は従業員を解雇する必要があります。

通常であれば、解雇30日前に解雇予告を行う必要がありますが、破産のようなケースであれば、予告を行わず解雇というケースも少なくありません。

この場合、予告から解雇までの日数に応じた解雇予告手当を支払う必要があります。給与や退職金と同様に、この解雇予告手当も優先的な扱いを受けますが、会社の資産がなければ、支払うことはできません。

3.経営者の再就職先はどうするのか

多くの人に迷惑をかけて会社を倒産させ、従業員を解雇したとしてもそれで終わりではありません。会社が倒産しても、生活をしていかなければいけません。そのときに、どうしても必要なのが新しい仕事ということになります。
それでは、会社を倒産させてしまった経営者の再就職先はあるのでしょうか。


結論から言えば、あります。
もし会社の倒産とともに自らが破産していたとしても、就職に際して破産者であることを明らかにする必要はありません。また、公的な書類などからも破産者であることを再就職先に知られることはありません。そのため、通常の就職活動を行い、新しい就職先を見つけることは十分に可能です。ただし、この場合、年齢的な問題で仕事が見つからない、元経営者としてのプライドが邪魔をして普通の仕事に就くことに抵抗があるという人は少なくありません。


また、経営手腕は問題がなかったにもかかわらず連鎖倒産に巻き込まれたといった場合、出資者を集めて再び経営者に返り咲くという場合やかつての人脈や培った技術によって仕事を見つけるといったケースもありますが、これはよほど幸運なケースや、元経営者に人徳がある場合と言えるでしょう。

4.まとめ

会社が倒産すれば多くの場合、経営者も自己破産を余儀なくされます。それだけでなく、家族や従業員の人生にも大きな影響を与えるのが倒産というもの。

もし、倒産の危険を感じたら、一刻も早く融資先の金融機関を始めとする専門家に相談することが重要です。これまで多くの企業経営を見てきた専門家の目で問題点を洗い出すことで、倒産を避けることができたり、倒産による取引先や従業員に対する迷惑を最小限に食い止めて、経営者自身も新しい一歩を踏み出すことにつながります。

image by  © Gines – stock.adobe.com